既存のドレンは床面より10㎜程高い位置にあり、流れきらない砂やゴミが長年溜まり続けヘドロのようになっていました。
特に気になったのがドレン周りを指触した際、シートがベコベコと凹む部分がありました。
この場合躯体の劣化で異常が起きているか、もともと躯体が無いと考えられます。一般の方は躯体が無いなんて事ありえるの?と思うでしょうが、個人の感想では少なくないと思います。実際に触った瞬間、またか…とため息がでました。
シートを撤去してみるとやはり空洞がありました。なぜ空洞が出来るのかというと新築時ドレンを設置する時に躯体を削ったり、穴を開けて設置することがあります。
設置後削りすぎた部分等にモルタル等で埋め戻すのが一般的ですが、シート防水等は最初の写真を見てもらえれば分かるように、張ってしまえば見た目では分からなくなってしまいます。
プロ意識の低い業者はそこを利用し手抜きをしています。後に不具合が起きることを考えれば埋め戻すぐらい大した手間ではないと思いますが…残念です。
さらにこの業者が酷いのは埋め戻さないどころか空き缶等のゴミを隠していました。中心に見えているのがタバコの吸殻入りの空き缶で少量のモルタルで固めてあります。こんな状態を見ると怒りすら覚えます。
空き缶等のゴミを撤去し、しっかり清掃します。出てきた空き缶はとても古いデザインで私が小学生の頃販売されていた物でした。
20年以上この状態であれば雨漏りするのも無理もありません。しない方が奇跡です。
バブル時期に工事をしていた職人さんがよく言っていましたが、当時はコンクリートの打設時等に食べ終わった弁当のゴミ・空き缶や小さなゴミを入れている人間を見かけたそうです。とても信じられない話ですが、私の工事経験の中で浮いている壁を開けたらスポンジ・缶・タバコ等が出てきたこともあります。
もちろんこのようなケースは稀ですが一人の職人としてはとても不安になる出来事です。
気を取り直して鉛ドレンの加工です。設置する場所に合わせ加工します。
加工といっても鉛部分を折ったり、叩いて平らにしたりと、地味な作業ですが好きな作業のひとつです。
加工した鉛ドレンを一度取り外し、埋め戻す部分に樹脂プライマーを塗布します。
樹脂モルタルを充填して形成します。
モルタル硬化後、加工した鉛ドレンを再度設置し、シーリング処理します。
シートを剥がした部分がそのままでは雨漏りしてしまうので、その日のうちにウレタンで仮防水をします。
ここまでくると一安心です。後は天気の様子を見ながら残りの立上り部を剥がしては仮防水、剥がしては仮防水を繰り返します。
仮防水が終了したら本防水を行います。本防水のウレタンが硬化したら保護用のトップコートを塗布して終了です。
最後にこのような建物は少なくありませんが熱心な施主さんが多くなり、プロ意識の高い職人達が少しずつ増えてきているように思います。
とはいってもまだまだ手抜きや無知による不適切な工事は減りません、いたちごっこにすらなれてないと思います。
でもいつか意識の高い職人の数が上回り安心できる建物が増えるよう、多くの施主さんや意識の高い職人達に貢献できるよう、これからもしっかりと技術を磨き空いた時間には教科書を開きと努力していきたいと思います。